98年11月
パラダイスの変貌 サムイ島
十数年前のサムイ島には、ツーリスト用のバンガローが点在するだけで娯楽設備どころか満足なレストランもありませんでした。ドイツなどの西洋人ヒッピーが開拓したとされる南洋のパラダイス、サムイ島の変貌には著しいものがあります。今は飛行場ができ、高級リゾートが立ち並び、メインストリートにはレストラン、カラオケクラブ、バー、旅行代理店、土産物屋、ダイバーショップ、画廊などが軒を連ねて、外国人租界の様相を呈しています。航空運賃が等距離のバンコク〜スラタニー間で1700バーツのところを、バンコク〜サムイ島で3000バーツと割高なのに、1日10便を超えるフライトがつねに観光客で満席状態なのです。タイの不況をよそにサムイ島だけは活況を呈しています。お隣のパンガン島では満月の夜の砂浜で、フルムーンパーティーと呼ばれるドラッグフリーのお祭りが開かれ、“外国人租界の治外法権”のようなものとして黙認してきた警察も、世界に喧伝されるようになってようやく取り締まりを厳しくするようになってきたところです。日本の若者がこのフルムーンパーティーを目当てにサムイ島に行き、警察に拘束されたという話もよく聞きます。
さて最近のサムイ島の話題は、本来のサムイ島民と出稼ぎにきた他地域のタイ人の葛藤でしょうか(観光客には関係ないのですが)。素朴な島の人たちで貧乏なヒッピーの対応をしていた頃と比べ、今は観光従事者の多くを島外者が占めています。外国語が話せるよそ者がホテルなどの管理職に居座り、教育の無い島民はいつまでたっても雑用係です。また、リゾート建設が本格化した10年ほど前に土地を売ったり、貸したりした島民たちは、こんなに観光客が来ることを想像できず、二束三文で契約しています。島民にとっては何となく島を乗っ取られたような感じです。土地をリゾートに賃貸している島民は、10年契約の更新になって、今までの損失感を補おうと賃貸料の一挙値上げを要求して話がこじれるようになってきました。
11月に滞在していた某リゾートでのできごと。滞在中に突如、オーナーの交代劇がありました。契約更改のこじれからリゾートの経営オーナー(島外者)に退去を申し出ていた島民の地主が、強制執行の手段に出たのです。冷蔵庫の飲み物もタダで全部持っていって良いからいますぐチェックアウトして欲しい、とレセプションから電話が入った時には何がなんだか状況がつかめず、不景気もここまできたかと一人合点してしまったのですが、話を聞いてみるとどうも違うようです。島民の地主の弁は−
「安い地代で10年間、もう充分に儲けているのだから出ていってもらう。今後はこのリゾートの経営は私がやります!」
台湾の本省人と外省人、沖縄のウチナンチューとヤマトンチュー、…。歴史も状況も迫害程度もサムイ島とは全く違うのですが、“島”というものを考えさせられました。