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99年1月

アジア大会の次はバンコク・オリンピック!?

1月10日から1週間のスケジュールでFESPIC(アジア太平洋障害者競技大会)がバンコクで始まっています。アジア大会でのとりあえずの(プレスセンターの不備などスポーツ記者たちの不満は多く聞きますが)成功と順調なFESPICが経済効果を産み、気を良くしたタイ政府は2008年のオリンピックゲームに立候補する準備まで進めています。今週中にも立候補するかどうかの閣議決定が行われるようです。

昨今、ソルトレークシティ、シドニー、長野などのオリンピック立候補に関するIOC(国際オリンピック委員会)委員の収賄疑惑が新聞紙上を賑わしています。一大ビジネス組織となったIOC、FIFAなどスポーツ界の金権体質を批難する声が高まっていますが、今回のアジア大会はどうだったのでしょうか?アジア大会でも例の如く、放送権料のゴタゴタ、スポンサーシップの奪い合い(なすりつけあい?)、スポーツ選手への懸賞金の多寡などの醜聞が飛び交っています。以下、アジア的話題をいくつか…。

[遺恨!]

大会開始直前のサウジアラビア選手団の不参加表明は、タイとサウジアラビア間で遺恨になっているある事件を思い起こしました。サウジ王室の使用人として雇われていたタイ人が王室の宝石類を大量(総額はタイの国家予算に匹敵する)に盗み、タイに持ち帰ったという事件です。それまでタイ人の出稼ぎ受け入れ主要国だったサウジアラビアは、出稼ぎタイ人労働者すべての国外退去を命じ、タイ当局に盗難宝石の回収を促すことを両国国交の第一命題にしてきました。盗難宝石の大部分はすでに回収されたのですが、価値のある物はタイの政財官界の奥様方がいまだに身につけているという噂もまことしやかに囁かれています。調査にあたったサウジアラビア大使館員が惨殺されるなどの不可解な事件も起こっています。このサウジ宝石事件は未解決のままで、今回のサウジアラビアの突然のキャンセルは、宝石事件の報復であるという見方がもっぱらです。サウジのキャンセル表明は「ラマダーン(断食月)入り直前であるという宗教上の理由」ですが、他のイスラム国は参加していますし、開会1週間前のドタキャンの説明にはなりません。お金持ちは金銀財宝に執着するものなのでしょうか、サウジ王家の恨みはいまだに晴れていません。

[八百長?]

アジア大会の会期中のこと、中国の卓球チーム監督が八百長を告発する会見を行いました。国名は明らかにしていませんが某国チームから八百長の話を再三持ち掛けられたというのです。そもそも八百長をしてメリットがあるのは、ゲームが賭博の対象になっている場合やお金とリスクを犯してもチームが絶対に勝たなければいけない場合です。そしてチームの優劣が格上の方に負けるように話が持ち込まれるのが普通です。また、力が歴然としている場合は八百長がバレてしまうので、拮抗する力を持っているチーム間で成立するものです。このように考えた時、中国チーム監督が言う某国チームに該当するのは日本か韓国の二カ国しかありません。タイでの報道にはそれと匂わせるような記事もあります。これには日本も韓国も大憤慨し、否定しています。この件はうやむやのまま沙汰止みとなり、中国監督の(神経戦を有利にするための)狂言なのか、本当に八百長の依頼があったのか、真相は闇の中です。さもありなん、と思わせてしまうのが、今のスポーツ界の現状でもあります。そもそも「国境を越えた友情」という謳い文句で開催されるアジア大会が、国威発揚の場となり、他国チームの中傷の場になることを考え直す必要もありますが、…。

[ウサギに代わるもの!?]

懸賞金で選手たちの奮起をうながすことの是非はともかくとして、今回のアジア大会でもっとも高額の報奨を得たのは誰でしょうか。

偏見かもしれませんが、懸賞金は“ドッグレースのウサギ”だと思っています。鼻先にぶら下げられたウサギにソッポをむくほどの無欲あるいは飽満な選手はほとんどいないでしょう。ウサギの種類にもいろいろあって、即金の場合もあれば、終生年金や故国での社会的地位の保障など、メダルを取ると取らないとでは雲泥の差の条件が用意されています。

日本の陸上短距離の伊藤選手が100メートルのアジア記録更新や200メートル、400メートル・リレーでの金メダル獲得を評価されて今大会のMVPに輝き、10万ドル(1,200万円、三星電子提供)の賞金を手にしました。日本陸連からの報奨金もありますので、伊藤選手が稼ぎ頭のひとりであることに異論はありません。それ以上に今回のゲームで何億円もの価値のある報奨を手にした選手がいます。

それはロスアンジェルス・ドジャースで活躍する大リーガー朴投手です。プロ野球選手が参加した韓国、台湾チームとアマチュアだけで編成した日本チームの実力の差は歴然としていますが、それにしても韓国vs日本戦のコールドゲームは圧倒的でした。手加減せず真っ向から大リーガーの実力を見せつける朴投手の力投に日本選手は手も足も出ません。実は朴投手には勝たなければならない“ウサギ”が用意されていました。韓国のスポーツ選手が持つ大きな障害は、徴兵義務制度です。特にプロ選手には稼ぎ時の2年間を兵役でぼうにふってしまうことになり、死活問題です。ドジャースで成功した朴投手はまだ兵役義務を終えておらず、入隊年齢期限も迫っていました。朴投手にアジア大会での金メダル取得で提示された報奨は徴兵免除でした。朴投手の鬼気迫るピッチングも肯けます。この金メダルで朴投手は、2年間の大リーグの年棒(数億円)を失うこと無く、野球を続けることができるようになりました。韓国で徴兵拒否は重大な罪で、徴兵逃れしたい韓国の若者たちは朴投手を羨望のまなざしで見つめている、ということです。