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今夜の番組チェック


麻薬戦争〜ビルマ国境を行くA
   「新旧マフィアの抗争」

   6月末のことである。
 イタリア人ジャーナリストRから突然の電話が入った。麻薬に興味はないか、といきなりの質問である。曖昧な返答を許さず、単刀直入にYES or NOを問うている。反射的にYESと答えてしまった。7月のビルマ行きのきっかけである。

 UNDCP(国連麻薬撲滅計画)バンコク事務所のチーフはイタリア人である。そのイタリア・コネクションでRにビルマ国内での国連の麻薬撲滅計画の取材許可が下りた。随分前から練っていた話らしいが、あいにくRに急用ができてビルマに入れないという。Rはイタリアの新聞やテレビ局にアジア地域の情報記事を提供している。そのカバー地域は、日本やモンゴルなどの極東地域から東南アジア、南アジア、中央アジアまでを含んでいる。ビルマ取材予定時期に急遽カシミール問題に関する印パ首脳会談が行われることになり、提携しているイタリアの新聞社から、印パ首脳会談を取材するように指令がきたという。しかし、行きがかり上、せっかく許可の取れたビルマ取材をキャンセルすることができずに、私に白羽の矢をたてた。Rは印パ首脳の取材が終わり次第、ビルマに合流するから、それまで撮影取材していて欲しいという。ただし、予算がないので自費でカバーしてほしいと電話の向こうで小さな声で呟いている。

 ビルマの取材ビザを取るのは至難の業である。文化・芸術・民俗などのジャンルなどは、それほど難しくはない。いざ民主化がらみの取材になると、ビルマ政権は鉄のカーテンをひく。1993年から1996年まで、私は某TV局のバンコク支局員として繰り返しラングーンに通っていた。アウンサン・スー・チーさんの自宅軟禁解除(1995年)とその後の民主化の動向を追うことが主な取材だった。そんなことで、私の名前もビルマ軍政の記録に残っている。つまり取材ビザを申請しても、なかなか許可が下りないのである。それが棚からぼた餅のように取材ビザが取れ、普通なら許可の出ない地域に入れるというのだ。自費であろうが、Rの身代わりであろうが、もちろんYESである。

 ヨーロッパのヘロイン供給源は、黄金の三日月地帯と呼ばれるアフガニスタンを中心とした中央アジアである。しかし、タリバン政権がケシ栽培禁止を表明したことで、ヨーロッパでは東南アジアのヘロインに注目が集まっているという。"ボルサリーノ”が東南アジアを荒らしにくる、Rの話を聞いていると、そんなふうに思えてくる。実際に、タリバンの声明のあとに東南アジア産のヘロイン価格が高騰している。

 今年4月、私はタイのビルマ国境に沿って、メーソット〜メーホンソン〜チェンマイを個人的に旅をした。長年の宿敵であるシャンとワの麻薬軍、そしてそのバックにいるタイとビルマの2月の軍事衝突の背景を知るためである。この旅で、新麻薬戦争の構図がおぼろげながら見えてきた。一概にいえば、それは四つ巴(いやそれ以上)の新旧麻薬マフィアの利権抗争である。麻薬ビジネスの主流はケシを原料にするヘロインから、化学合成物質のヤーバー(メタアンフェタミン)に移り変わっている。ヘロイン生産のためにはケシ畑と農民を確保するために、地域の軍事・行政をコントロールできるくらいの権力が必要である。しかし、ヤーバーの原料エフェドリンはバンコクの薬局でも手に入るくらいだから、新興マフィアの群雄割拠を許している。つまり、麻薬マフィアあるいはその利権で甘い汁を吸っている政治家・軍人たちの再編成が、今起こっているのである(具体的な新旧マフィアやその背景を書くのは、まだ取材継続中なので、ここでは控えておく)。

 その麻薬マフィア再編抗争に加えて、"ボルサリーノ”や"倶利伽羅紋紋”などの需要側の勢力地図も変わるとなれば、何がなんだかわからなくなる。私の場合、無い知恵をアームチェアで捻っても、偏頭痛がおこるだけである。できることは現場を見る、聞く、歩くこと(そして酒を飲み、自己陶酔あるいは自己嫌悪に落ちること)。

 そんなことでビルマへ出発。

#次回から、いよいよビルマでの取材を順を追って紹介するつもりです。
 ただし、フィリピンにしばらく行きますので、更新は遅れます。フィリピン行きを言い訳にしていますが、遅々と進まない更新の本当の理由は私が怠惰なだけです。すみません。

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